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第52話 「悪夢の年末年始〜BMW製造ラインにおける組立ミスによる悲劇」

(作成:1999年3月6日 改訂:1999年6月5日)

(TEXT : techuo / E39 528i)


(その1)

年も押し迫った昨年12月の出来事です。
いつものように仕事の客先に向かうために自宅を出、圏央道(高速)を100km/hちょっと で走行中、突然、エンジン回転数が落ち始め、アクセルを踏み込んでも反応しなく なったため、後方を確認しながら、急いで車を路肩に止めたところ、エンジンが 止まってしまいました。
その後、セルはまわるもののエンジンが一向にかからないため、馴染みのディーラーに 連絡し車を引き取りに来てもらいました。
私の方はと言うと、持ってきてもらった代車のE34で、そのまま客先へと向かい、 結果は後で連絡を入れて確認することにしました。

ディーラーからの連絡で、燃料ポンプが故障し、ガソリンがエンジンに全く送れなく なってしまったためにエンジンが止まってしまったとのこと。
完全なる機械的な故障で、ディーラーに持ち帰った後も全然エンジンはかからないまま とのこと。
燃料ポンプを発注し交換。
愛車は、約1週間後に無事退院してきました。


(その2)

燃料ポンプの交換の約1週間後、やはり仕事先に向かうため高速走行中にまたもや 突然エンジンが停止。
まさか?と思いながら路肩に車を止め、セルを回してみても全くエンジンがかからず、 見た目は前回のポンプが故障したときと同じ。
早速、ディーラーに連絡し、迎えに来させるとともに車の引き取りをさせ、再び入院と なりました。
連絡を待って原因を確認したところ、燃料ポンプに接続されるゼンダユニットなるもの が、外れてしまい燃料ポンプが停止してしまったのこと。
ゼンダユニットを再接続し、即日退院。
新しい型の燃料ポンプになり、ゼンダユニットのケーブルも長いものがセットとして あるものの、前回、ポンプのみを交換し、ケーブルを交換していないため、追加にて 発注。
ディーラーに入荷次第、取り付けを行うために入院を予定。


(その3)

”その2”の退院後、僅か数日で、外環を走行中にエンジン停止。
全く同じ現象。
なんと止まった日が、ディーラーの年末年始の連休の初日で連絡が取れないため、 エマージェンシーサービスに連絡。
この時点で、私の名前は既に有名で、ナンバー等を言わずして全て話が通ってしまった。
(悲しいかも?)
すぐにお迎えの車が来たものの、連休中をどうするかが問題。
サービスの担当に詰め寄ったところ、SFW内で3日間のみ無料でレンタカーを手配します とのこと。
翌日、自宅にレンタカーのクラウン到着。
「わ」ナンバーを除けば、すばらしいの一言。
何しろ止まらないで走るんですから。(止まる心配は要らないですからね)
ディーラーの連休明け、自宅に営業の担当者が手みやげを持ってお出まし。
原因はまたしても、ゼンダユニットのケーブルが外れてしまったために起こったとのこと。
入荷待ちの対策版ケーブルを取り付け、ディーラーで走行テストを行い数日後に退院。

....私もこれで終わりかなぁ?って思って安心して乗っていたところ....


(その4)

インフルエンザによる39度近い熱を押しての仕事帰りのある日、前回の修理退院から 1週間も経たずして、再び走行中にエンジン停止。
「まさかっ」と思っても、もうどうにもならず、ディーラーに怒りの電話!!
またもや入院となりました。
ディーラーの所長と工場長が相次いで自宅に連絡をよこし、BMWジャパンからも 技術担当を工場に来させて調査しているので、もう少し時間をくださいとのこと。
ドイツ本社にも問い合わせて全ての結果が出たのはそれから3週間近く経ってから のことでした。
BMW本社、BMWジャパン、ディーラーの総力をあげた?調査結果は以下の通りです。



(トラブル詳細について)

(製造ミス)

...機械的な製造ミスでなく、組立作業員による手抜き、不正(間違ったの でなく故意にやった可能性が高く、ちょっと製造ミスとは意味が違うかも知れません)。
原因の一つはBMW工場における組立・製造ミス。
これは、ベントパイプと呼ばれる、外部空気を燃料タンク内に導入するためのパイプと その取り入れた空気を浄化するためのチャコールキャニスタをいう活性炭等が入った 浄化装置との間にある接続部分の機密性を高めるためにグロメットと呼ばれるゴムの パッキンが、はまっているのですが、本来、これは一つでいいところが、ベントパイプ の中にもう一つパッキンがパイプを塞ぐように変形して詰まっていました。
これは、外観の検査では、まったく発見できず、パイプを交換して調査し、もう一つの パッキンが詰まっていることが発見できたものです。
この報告には、私もビックリでしたが、発見したディーラーのサービス工場もビックリ の様子でした。
要は、製造ラインでパッキンをパイプとチャコールキャニスタ間に一つ入れるところを、 間違ってパイプの方へ入ってしまったものだから、外観検査をすり抜けるために、 もう一つのパッキンを帳尻あわせに取り付けた。
と、言ったところです。
このパッキンがパイプの中に詰まっていることにより、外部から燃料タンクに入る 空気の量が、大きく阻まれてしまうことになっていたのです。

...このベントパイプおよびパッキンは、勿論、新品に交換しているのですが、ベント パイプのついては、外部空気を吸い込む際にゴミ等を吸い込まない対策や振動対策等 もなされている対策部品が出ています。
型番としては従来品(たぶん在庫がなくなるまで)と両方存在しています。
私の場合は、大騒ぎになってしまったため、対策版の方をドイツから空輸して 取り付けました。


(機械的故障)

...TEバルブの機械的故障。
TEバルブが正常に動作せず、過剰に燃料タンク内の気化したガスをエンジンに送り込 もうとしていた。

これだけの故障であれば、特に問題は無かったのですが、ベントパイプの件があります ので、燃料タンク内に空気が送り込まれず、真空に近い状態となり、燃料タンクが変形 (はずした実物も見てきました。底から見たらへこんでました)、この変形により、 燃料タンクに接続してあるゼンダユニットの端子がはずれて(断線)しまい、燃料ポンプ が動作しなくなった。

E39における、このトラブルについては、勿論、日本では初、ドイツ本国や他の 国々でもTEバルブ自体の故障は数例あったみたいですが、こんなのは初めてだそう です。
これに関しては、情報そのものをBMWジャパンですら持っておらず、結果、このように 2ヶ月の長期におよぶトラブルとなってしまった訳です。
(ユーザーから言わせればメーカー側の都合ですけどね)

...今回のトラブルで交換したパーツは、
フェール(燃料)ポンプ、フェール(燃料)タンク、TEバルブ、チャコールキャニスタ、 ゼンダユニット接続ケーブル、ベントパイプ、グロメットです。

費用は全てSFWにて対応です。
でも、こんなトラブルだったらSFWに加入して無くてもタダで当然ですよね。


ディーラーには、報告書と写真を提出させたのですが、それでも、納得のいかない ところは、実際にサービス工場に出向き交換した部品の実物を見てきました。
写真を添付しますが、小さくて見にくいかも知れません。ご容赦を。


E39-528iトラブル


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