[メンテ18]  (←前) (次→)

第2話 「Z1とは?・・その1」

(作成:1997年12月22日 改訂:1998年2月3日)

(TEXT : 三四郎 / Z1 & E36-328i )

Z1とはどんな車なのか?。これまで集めた情報を整理してみました。
「知ってるよー」という方も多いかもしれませんが、ちょっとお付き合い下さい。


1.生い立ち

Z1は1984年、BMWの先進技術の開発を担う専門集団であるBMWTech nikGmbHが“classic in character but avant-garde in design”を テーマに開発を開始した車で、3年後の87年のフランクフルトショーで発表さ れました。販売を目的にした車というよりは、樹脂製のボディーパネル、新形 式のリヤサスペンション、空力の追求など、むしろ同社の技術開発の実践の場 としての車であったと言えるかもしれません。とくに、リヤサスペンションは 1961年のBMW1500以来代々受け継がれて来たセミ・トレーリングアームと決 別する最初のモデルであり、現在のマルチリンク方式を採用するBMW各車の 礎になっています。
余談ですが、87年のフランクフルトショーではちょっとしたセンセーションを 巻き起こし、発売開始前に3年分の生産台数である3500台もの注文を受注し、 その中にはプライベート用に購入したいということで当時のBMWAG社長の クーンハイム氏、技術担当役員のライツレ氏、販売担当役員のクラマー氏、B MWTechnikGmbH社長のベーツ氏などの首脳陣も含まれていたそう です。BMWってこういう会社だから好きなんです。
そういえば、今回97年の東京ショーに来日したピシェッツリーダー社長も「自 分が一番好きなのはMロードスター」と語っていたと聞きました。いつまでも こういう会社であって欲しいですね。
さて、すこし細かく各部を見ていきましょう。


2.ボディーワーク

車はスチール製のモノコックを組立てた後、丸ごと亜鉛メッキしたうえ塗装し たシャーシーにボディー外装パネルを釣り下げた特殊な構造で、ボディー外装 パネルは使用される部位によって3種類の樹脂素材が使い分けられています。
まず、フロントボンネットはガラス繊維と樹脂を射出成型した1枚板です。こ のため成型時から多少歪みがある場合が多いほか、熱によっても歪みがでると のことで、フェンダーとの“ちり”がきれいに揃っている車は珍しいそうで す。したがって、こうした症状があっても直ちに事故暦がある車ではないとの ことです。三四郎号も右側は数mmボンネット側が浮き上がっていますが、そ の道の専門家の話では、「うねりが出てしまいがちなボンネットも比較的平滑 な面を保っており、この程度の歪みは普通」とのことでした。

フロントボンネットのほか、トランクリッドおよび幌を収納する部分の蓋もボ ンネットと同じ硬質な素材で出来ています。なお、トランクリッドは4本のガ スダンパーにより開閉を支える凝った作りとなっています。
次に、左右のフェンダーやドアを含むサイドのパネルは耐衝撃性に優れた少し 柔らかい感じがする素材で、軽微な接触による凹みなどの変形は自然に復原す るそうです。
さらに、フロント、リヤのバンパーは別の樹脂素材で、最近のBMW各シリー ズに装備されているのと同様の衝撃吸収構造になっており、時速4kmまでの 衝突には無傷で復原するとのことです。
なお、フロントバンパーの下には、縦幅4cm程度のゴム製のリップが付いて いて路面とフロントバンパーが直接接触することを防いでいます(下り斜面が 急に水平に戻るようなスロープでは擦ることが多いです)。
側面のパネルはシャーシーに釣り下げているような格好で固定されていますの でスチールモノコックの普通の車ように、パネルとパネルの接する所は寸分の 隙もないという訳には行かないようで、部位によってはゴム製のトリムのよう なものが挟まってます。また、外装ボディパネルは1時間程度で全て取り外す ことが出来て、その状態でも走行可能との由です。

ボディー下面はFRP製でフラットです。また、エンジンルーム下部は、空力 特性を向上させるため、オイルパンおよびトランスミッション下部を除き樹脂 性の平らなアンダーパネルで覆われています(真偽のほどは定かではありませ んが、ディーラーのメカニックの談によれば、BMWの市販車でここまで徹底 しているのは他にM1しかないとのことでした。リフトアップして見せてくれ たのですが、なかなかのカッコ良さでした)。
空力といえば、ちょっと面白いのがリヤの作りで、トランク下に枕のような格 好をした横長の大きなマフラーが付いているのですが、マフラー自体がリヤウ イングのような役割を果たしていて、マフラー上部を通った空気はトランクと バンパーの間に作られた隙間を抜けて行くようになってます。

ボディーの剛性感は、乗り慣れたE36セダンに比べてしまうと、見劣りするの は致し方ないところです。傷みの激しい目路段差など荒れた路面を高速で通過 するとボディーが撓ります。また、ちり緬状の道ではダッシュボードやサイド シル付近から軋み音が出ることがありますが、これはある程度オープンの宿命 と思って諦めています。
なお、懸念されるボディパネルの供給ですが、今のところはドイツ本国に発注 すれば1か月程度で入手可能、また、軽微な破損であれば国内でも修復可能と のことです。


3.パワートレーン

基本的にはE30の325と共通ですが、エンジンのマウント方法や補機の取 り回しの相違により、いくつかのパーツは特別のものを使用しているようで す。メカニックから聞いた話では、Z1に搭載のエンジンはE30と同じM2 0エンジンながら、オイルパンとエンジンの間はガスケットを使用しているE 30版とは異なりシール剤を使用しており、ここは数少ないZ1のウィークポ イントの一つだそうです(シール剤を使用しているのは、オイルパンの形状が E30と異なり、僅か8000台のために専用のガスケットを作ることが出来な かったからなのでしょうか?聞き忘れました。)。
三四郎号もオイルパンに微量の滲みが見られましたが、駐車場にオイルの染み が出来るほどでなければ、しばらくはそのままにしておいた方が良いとの説明 でした。
このほか、ラジエーターのアッパーホース、ロワーホースなどもZ1の専用 パーツを使用しており、こうしたパーツは本国へのスペシャルオーダーになる ため、壊れてしまうと修理に時間がかかるようです。
なお、並行輸入車で心配されるオーバーヒートですが、真夏の盛りに長時間の 渋滞に巻き込まれましたが、水温計はセンターより少し下を指したまま上昇の 気配すら見せませんでしたので、心配はなさそうです。エアコンがないのでこ ういう時はむしろドライバーの方が先に参ってしまいます。

ギアボックスはゲトラグ製の5段で、E30の325と同じものだと思いま す。シフトフィールは以前乗っていたixとそっくりで、1、2速がちょっと 渋い感じです(特に冷えている時は壊れたかと思うくらい入りにくいです)。


4.足回り

フロントはマクファーソンストラット、リアはZアクスルと命名されたマルチ リンク方式のサスペンションで、この発展形がセントラルアームサスペンショ ンとしてE36に採用されています。Z1よりも後に開発されたZ3がE30 のセミトレをリファインして使っているのとは対照的で、この辺がZ1がスタ ディモデルたる由縁なんだぁと思っています。
タイヤは標準で、225/45/ZRまたはVRの16インチです。ちょっと 太すぎる感じですが、乗り心地は意外に良好です。
ブレーキはフロントがベンチレーテッドの4輪ディスクでABS付きです。車 重が軽くタイヤの接地面も大きいのでブレーキは良く利きます。


[メンテ18]  (←前) (次→)