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第32話 「燃費の話(その2)巡航時のエンジン回転数と燃費の関係」

(作成:1997年12月17日 改訂:1997年12月26日)

(TEXT : そえそえ / E39 528i )

世間では巡航時の回転数が低い方が燃費がよいといいますが、どの程度のものなの か実験してみました。実験方法は簡単で、高速道路の同じ区間を同じ速度で5速3速2 速でそれぞれ走行し、その時の燃費を比較するというものです。(4速に関しては固 定して巡航できないので、5速3速2速でのテスト結果です。)なにぶん素人が行うテ ストですので多少の誤差はお許しください。だだし傾向ははっきりと得ることがで きました。


<テスト方法>

各ギアで時速80kmで片道7.5kmの区間を3往復し合計45kmの燃費で計測しました。 高速に乗り80kmになった時点で燃費計をスタート。インターを降りる直前でストッ プしデーターを記録。これを各ギアで3往復分繰り返す訳です。(燃費の数値は補正 済みで満タン法とほぼ等しい値です。)


<テスト結果>

5速平均燃費 15.7km/l (1分間当たり燃料消費量 84.9cc/min)
3速平均燃費 10.8km/l (1分間当たり燃料消費量 123.5cc/min)
2速平均燃費 6.9km/l (1分間当たり燃料消費量 193.2cc/min)

80kmでの計算上の回転数は5速1677rpm、3速3343rpm、2速5170rpmですから、だいた い2000回転で5km/lほど燃費が悪化しているということになります。速度は一定です から走行抵抗や空気抵抗は全く同じでです。つまり燃費の悪化分はエンジン回転を 維持するためだけに使われて、仕事を何もせずに無駄に捨てられているのです。こ れは停車してからぶかししているのと同じですね。


<燃費悪化の最大原因はフリクションロス>

また上記の実験から面白い事実も発見できます。例えば5速のまま80km/hから160km/h へ巡航速度を上げた場合、エンジン回転数は1678rpmから3356rpmに増加し燃費は15.7 km/lから9km/Lぐらいに落ち込みます(*燃費の話参照)。その差は6.7km/lですが、 前のテスト結果によるとエンジン回転増加に伴うフリクションロスの悪化による燃 費の落ち込みは4.9km/l程度なので、燃費の悪化分の約70%はエンジンまわりのフリ クションロスの増加が原因だということになります。


<高いギア比のメリット・デメリット>

高いギア比でエンジン回転を低く保つのは、フリクションロス低減に直結し、燃費 を向上に大きな効果が期待できます。でも弊害も予想されます。駆動力が弱くなる のでちょっとした坂でも速度が低下し追い越し加速もままなりません。加速しない とアクセルを踏みますが踏むと燃費が悪化します。これでは何のための高いギア比 なのかわからなくなってしまいます。

実験中にもそれは実感できました。5速だと全体的な燃費は良いのですが、アクセ ルに対する反応が鈍く車速のコントロールが難しいのです。気を緩めているといつ のまにか車速が落ちてしまってます。あせって必要以上にアクセルを踏むと車速が 伸びないのに瞬間燃費はがっくりと落ちてしまいます。起伏があるような所では車 速の維持と燃費の両立には慣れとテクニックが必要です。


<ギア比と燃費の関係>

高いギア比...燃費志向。低負荷走行時に非常に燃費がよい。特に平坦な高速道 路では威力を発揮。ただしちょっとした負荷でも大きくアクセルを踏まないと反応 しないので、道路状況や交通状況を見越した燃費走行のテクニックが必要。燃費指 向のギア比でも必要以上にアクセルを踏むと、逆に燃費は悪化する可能性がある。

低いギア比...パワー指向。トルクに余裕がある分ちょっとした負荷でもアクセ ル一定で気持ち良く走れる。起伏や加速での燃費の変動は少ないが、どれだけがん ばっても燃費は稼げない。


<燃費とパワーの両立のためのメカニズム>

必要なときに必要なだけのパワーを柔軟に供給できたら省燃費と加速力を両立でき るのですが、そのためにはギアの多段化が有効です。AT車で一番理想に近いのは日 産のCVTで、それに次ぐのが各社の5ATではないでしょうか。国産車も素早く4AT を脱却し5ATの採用を進めてもらいたいものです。


<BMWに期待すること>

以前メンテ16の燃費の話で高速走行ではスピードを上げるほど燃費が悪化すると 書きましたが、燃費の悪化の最大の原因は空気抵抗や走行抵抗でなく、エンジンの 回転上昇にともなうフリクションロスの増加だったのです。この事実は高速のみな らず一般道での走行にもあてはまります。フリクションロスを低減するためには、 高いギア比でエンジン回転を低く押さえるが効果的です。(反則技ですがマイクロ ロンの様なフリクションロス低減剤でも同様な効果が期待できそうです。究極に は、低い回転で高いトルクを発生させるエンジンに高いギア比のミッションを付け てやれば理想の燃費が出るはず。
その点SAABはがんばってます。新型SAAB95で小排 気量(2.3L)のターボで僅か1800rpmで3000ccNA並みの最大トルクを発生させ高いギ ア比のミッションを組み合わせてます。誰が買って燃費報告してくれませんかね。
またトヨタのプリウスも発進加速をモーターで行いエンジンは効率の良い低回転で 使うという手法をとってますね。世の中はこちらの方に進んでいるようです。が気 持ち良さという点では今一歩との評判。
今後気持ちの良い高効率エンジンとミッションが開発される事を期待したいですね。
BMWには期待してます。


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