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第8話 「Bi-Turbo マフラー製作記」

(作成:1998年6月1日 改訂:2006年9月17日)

(TEXT & PHOTO : 浦部 / E34-ALPINA B10 Biturbo )

今回は、535i用のステンマフラーを購入、これを加工して、 Bi-Turboに装着してしまった強者のお話です。
加工とは言っても、結局はオリジナルで全部作ってしまうことに なったようです。
流用したのは、JASMAプレートくらいですかね。(笑)
先日私もこのBi-Turboに乗せて頂きましたが、ステンマフラー 独特の太くて乾いた音色は、オリジナルのそれよりやや 大きめのサウンドで「やる気にさせる」ものでした。
性能は間違いなくオリジナルを大きく上回っています。
さて、それではご本人からレポートして頂きましょう。



OZWさんからBi-TURBOのマフラー製作記書いて見ない?って誘われ 1ページ担当することになりました会員番号1126の浦部です。 宜しくお願いします。

さて私がBi-Turboのマフラーを製作しようと思ったきっかけは '97年11月に憧れのアルピナB10 Bi-Turbo(並行物)を購入し、 喜びも冷めきらないうちにマフラーのタイコ部分がサビで ボロボロなのを発見し、その時は、穴が開いてからでも 新品を購入すればいいやと軽い気持ちで構えて居たところ、 その話を聞いていた友人が二コルに値段を聞いてくれたんです。
なんとその値段が50万! 桁が違うじゃないか!! って しばし呆然としてしまいました。
すぐさま、購入した某中古車店に連絡し、クレームで交換 してほしいと頼んだ所、値段を知ってか知らずかものすごく 渋られましたが、M5のマフラーが無加工で取り付き、 新品が在庫であるので、そちらならとの事で私も了承しました。
しかし、どうせオリジナルを保っていないのならターボ車だし、 スポーツマフラーが欲しいなと思って探しても何処にも アルピナ用のスポーツマフラーなんてあるハズも無く、 諦めかけた時、出張ついでに寄った茨城県の某カーショップに 中古の535i用のステンマフラーがあるじゃないですか!!
B10 Bi-TurboもE34ベースだし加工すればなんとか付きそうだ と考え即、購入してしまいました。
購入し家に帰って色々と調べるとまず当然の事ながら、 パイプの径が535i用のステンマフラーはΦ50 一方、Bi-TurboはΦ60。
異形状のサイレンサー(タイコ)部分を流用するだけで パイプ部分は全部交換するしかありません。

遅れましたが私は某自動車部品メーカーに勤めており、 試作工場に作業に必要な溶接機を始め、加工機械を使える とっても恵まれた環境があり(上役にはもちろん内緒ですが) 定時間後や休日を利用しこれまでもS13シルビアのエンジン をバラしてポート研磨したり、部品を自作してプライベート チューニングをしていました。
その悪いムシが騒ぎ出し、マフラーを製作するのもそんなに 難しくはないだろうと安易に考えていましたが、これが結構 大変な作業でした。

まず購入したマフラーをエアープラズマと言う切断機で タイコ部分までバラバラに解体します。
ここで分かったことは外車用市販マフラーの内部構造は大した 構造ではないという事です。
つまり、せっかくΦ50デュアルパイプのレイアウトなのに 内部でΦ50シングルに集合しているのです。
確かにパイプを中間で太らせたり、細めて排気ガスの膨張や 流速を早めるテクニックはあるのですが、あまりにも断面積が 違いすぎ、ただ単にE34の車格に似合う音質を狙うため サイレンサー内部のグラスウールの量を増加させるための手段 としか思えません。
皆さん、スポーツマフラーを購入する時は色々な情報を基に 選んで下さい!!
せっかく購入したマフラーを付けたのに逆にパワーダウンしてた なんて悲しいですから!
ちなみにこのマフラーは新品で¥19,5000?もします。 高いマフラーは良いとも限りませんね。
そんな事もあってアルピナ純正のマフラーってどんな内部構造 してるんだろうと興味津々! こちらも解体してみて、またしても ガッカリしてしまいました。
内部構造を下記に図示しますが、こちらも効率の点で悪影響 を及ぼす構造です。図示の通り内部は3重構造にもなっていて 重量は20Kg以上(もっと重いかも!)も有り本当に50万もする 代物ではありません。ただし救いとしては、マフラーはアルピナ 内製では無く、BOYSEN というメーカーにアルピナが作らせている ものらしく、M5のマフラーも同じメーカー製でした。

inside exhaust

話がそれてしまいましたが、タイコとパイプが分割された状態で パイプの曲がりを調べます。
マフラーメーカーはNCパイプベンダーという色んな角度にパイプを 曲げる機械があって自由自在に角度を決められるのですが、 市販の曲りパイプを使うしかありません。
何とか45度ベンド2本と30度1本を組み合わせれば出来そう だったのでΦ60のパンチングパイプとともに会社に出入りしている 鉄鋼屋さんに注文しました。
パイプが来るまでの間にマフラーを吊るステーを外し、 フロントパイプとの継ぎ部取り付けフランジをフライス、 旋盤などで作って置きます。 ステンレスは普通の鉄より硬いので削るのに苦労しました。
部品が揃ったところでいよいよ組み付けです。
まず解体したサイレンサーの溶接ですが、これが最大の難所でした。 パンチングパイプの両端に10mm 程に切断したパイプを溶接します。 これは、サイレンサーとの溶接をしやすくするためです。
続いて解体したサイレンサーの合体ですが、先ほど作ったパイプの 先端がサイレンサーから2〜3mm 出して仮止め溶接し スチールウールとグラスウールを詰め込みます。 このグラスウールが手に刺さり、いつまでたってもチクチクして 地獄でした。
サイレンサーの板厚は1mm程でTIG溶接するのですが 油断するとすぐに穴が開いてしまいます。
穴を塞ぎながらの溶接でちょっと奇麗とはいえない溶接になって しまいまいたが、ここで挫折はしていられないので 次の作業に進みます。
ここからは車をジャッキアップしての作業で休日の工場に車を 乗り入れ溶接機が届くところで作業します。 さすがにこれには勇気が要りました。なんたって上役に 見つかったら ???? かもしれませんもんね。
普通の人はやらないのでしょうが、ここまで来て諦められないので 工場内に上役が入って来ない事を祈って作業します。
ジャキアップしてM5マフラーを外します。 このM5マフラーも重い!!アルピナマフラーに負けない程で、 改めてドイツ製品の質実剛健ならぬ重実剛健(?)さを 感じてしまいました。

exhaust system

サイレンサー単体で車体に組み付け、 車体のサスペンションメンバーをかわす様にしながらベンドパイプ をMIG溶接機で仮止めしていきます。これも結構 地獄の作業で 車体の下に潜りながら左手でパイプを持ち、右手には溶接トーチで 当然 スパッター(火の粉)が降って来て熱い思いも数知れず “なんか焦げ臭いな”と思ったら髪の毛が焦げて50本ぐらい毛が 抜けた時には思わず、鏡の前に走って行っちゃいました。(笑)
仮止めが終わった所で一度ジャッキを下ろし、一服しながら マフラーを揺すって干渉が無いかを調べます。

rear exhaust1 align="right" align="right" ついでにテールパイプをサイレンサーに合わせてバンパーとの干渉 も確認します。これは最初っから左側だけ535iよりも大きく バンパーが切り欠いてあり、あたかもこのマフラーの為に切り欠き が有る様でクリアしました。
再度ジャッキアップし本溶接するのに大きいサイレンサーが 付いていては邪魔になるので一度パイプとサイレンサーの仮止め だけを外します。パイプをTIGで本溶接し車載状態で再び サイレンサーにMIG溶接で仮止めし、マフラーステーを仮止め した所で車体からマフラーを降ろします。これが軽い!
Bi-Turboの50対50の重量配分が52対48ぐらいになったか ななどと余計な事を考えてしまいました。

rear exhaust2

ここまで来たらもう完成したも同然。
サイレンサーとパイプ、ステーを本溶接し最後に慎重にマフラー テールを溶接します。なんたってマフラーテールはマフラーの顔 ですものね。
溶接を全てチェックし軽く磨いて完成です!!

完成した喜びと共に不安がひとつふたつと頭を過りました。
せっかく作ったマフラーの性能と音量です。作ったはいいけど パワーダウンやサーキットでしか走れない音量だったら今まで の苦労も水の泡ですから・・・。
マフラーを仮組み付けし新品のガスケットを組み付け、干渉を もう一度確認しボルトを本締めします。
ジャッキアップした状態でいよいよエンジンに火をいれます。
ブォーンと重低音を響かせながらアイドリングしています。
マフラーが熱くならない内にガス漏れをチェック どうやら 大丈夫みたいです。ジャッキを降ろし、運転席に座り2,3度 レーシングさせてみるとドゥヒュン、ドゥヒュンとノーマル よりアクセルのつきが良くなり、タコメーターのピックアップ が軽くなってます。タービンで音が消されているのでしょう、 爆音にはならずに済み、ホッと胸をなで下ろしました。
しばらくアイドリングを続け、サイレンサー内部のグラスウール を落ち着かせてから実走行に入ります。
結果は・ ・ ・ ブーストの掛かり始める3500rpmからは パワーの違いが体感出来る程で、シフトダウンの際、回転を 合わせるためレーシングさせても簡単に回転が上昇してしまう ので、今までのつもりでいたら回転を上げ過ぎてしまいました。
アクセルのONにも敏感に反応してくれます。
これは、作ったマフラーがストレート構造で、マフラーによる 背圧が減少したためでしょう。
予想以上の出来に大喜びです。
・ ・ ・とここまではいい事ばかり書いてしまいましたが ストレート構造の弱点で低回転でトルクが細くなってしまい ました。これはターボ車の宿命ですね。なんたって圧縮比 7.2:1でノンターボよりかなり圧縮比が低く設定してあり 本来、パイプ径を細くしないとトルクは稼げません。
といっても、上でのパワーか下のトルクかといったら先程 書いたメリットを考えれば、やはり上でのパワーを取って しまいますよね。

今回製作したマフラーは自作のくせに、元々のマフラーの JASMAプレート付きで自作とは分からない様になってます。
自作したって知ってるのは、この記事を見た人と数人だけです。
外車って元々、車検が甘いって話も聞きますし、おまわりさんも このマフラーだったら保安基準適合って認めてくれるでしょう。 (甘いか!?)
最近の国産車チューニング事情は10年前とは全然違い、部品の数、 性能が格段に上がっていますが、外車用はまだまだこれから先も 少ないままでしょうね。
私は逆にボルトオンで行かない所に面白味があると思います。
これからもメンテはもちろん、流用や自作でBi-Turboを楽しんで 行こうと思ってます。
今回マフラー製作の記事をUPさせていただいたのですが、 また機会がありましたらUPさせて戴こうと思ってます。
ちょっとメンテとは外れた内容で済みませんでした。

TOSHINORI.URABE

E-MAIL tu-121@mars.dti.ne.jp


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