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第9話 「Bi-Turbo エアコン修理体験記」

(作成:1998年7月31日 改訂:2006年9月17日)

(TEXT & PHOTO : 浦部 / E34-ALPINA B10 Biturbo )

前回に引き続き、浦部さんのレポートです。
夏のトラブルの定番、エアコンのメンテです。
コンプレッサーと、高圧低圧ホースは個人輸入だっのですが、ALPINAパーツを扱っているお店がなかなかなく、ALPINAは世界でも珍しい車なんだと再認識させられたりしました。
結局アメリカの I.P.S.というショップに頼んでそれこそ世界中からパーツを集めてもらうことになったわけです。
ホース類は、ドイツのALPINAから取り寄せ、コンプレッサーは、ロスにある専門店からの入手です。その専門店は、日本から持ってきたものを売ってまして、結局コンプレッサーについては逆輸入という形になりました。
ただ、I.P.S.としても ALPINAパーツを扱うのは初めてで、品番間違いなどがありました。もちろんこれは送料相手持ちで返品交換も可能だったのですが、部品到着まで一週間待たなければなりません。しかし今回は、浦部さんのウルトラテクニックで事なきを得ました。しかも事情を話すと、それは大変だったねということで、コア代$125.00 に $25.00 余分に付けてくれることになり、結果オーライということでしょうか。
さて、前置きはこれくらいにして、そのウルトラテクニックをお楽しみ下さい。


またまたOZWさんのお助けって事で、このメンテコーナーを担当させて頂く会員番号1176の浦部です。
さてマフラーが完成し喜んで居たのもつかの間 天国の次には地獄が待ってたんです。
Bi−TURBOを購入したのが去年の11月で、購入時しっかりエアコンのチェックはしたのですが、約半年冬〜春の時期だったのでクーラーの必要も無く乗ってたのですが、4月の初めともなると天気の良い日には車内も結構熱くなり、クーラーを入れた所、全然涼しくなく逆に外気導入モードではエンジンからの熱風が吹き込んでくる始末。
エアコンのガスが抜けているだけだろうと行き着けのスタンドでガスを入れてもらい、その時はクーラーも効くようになり、別にそれで済んだのですが、1ヶ月も経たない内にまた、元の熱風しか吹き出さないエアコンに逆もどりしてしまったのです。
これはおかしいと思い、ニコルに持ち込み調べてもらった所やはりエアコンのガス漏れで本格的に直すと30万との見積りに唖然としてしまいました。
何でも、A/Cコンプレッサーとそれに接続されているホースや新冷媒に対応したレトロフィットキット(特殊ゴムで出来た接続部のOリングだそうです)を交換しなければならず、全て ALPINA製って事でした。
心の中でA/Cコンプレッサーは他のE34と何が違うんだよって思ったんですが、怒りと悲しさをこらえつつ、ニコルの担当の人にちょっと修理お願いするのはボーナスが出たらと言って部品番号をしっかり聞いて置いたのです。
30万の見積りを聞いた瞬間心の中にひらめく深い意味があったのです。
それはOZWさんがHPで部品の個人輸入をお手伝いして下さっていて、自分で部品を個人輸入し自分で修理すればだいぶ安くなるだろうって思いです。
早速、OZWさんに連絡し、部品の見積りを貰ったのです。
コンプレッサーはリビルトでホースはALPINA純正で価格は下記の通りでした。
A/Cコンプレッサー:$359.00− (コアチャージ$125)
A/C ホース A:$163.56−
A/C ホース B:$237.33−
航空便送料:$150.25−
TOTAL:$1035.14−(このうち$150.00は返金)
日本円で14万ちょっと(コア代金から返送料を引いた約\1,5000は戻ってくるので実質\130,000弱)ですから、これならニコルでA/Cコンプレッサーのみの価格より安い!!
即、注文を入れました。
部品の到着を待つ事3週間、この間 ドイツのALPINAからアメリカの業者に輸送中ホースの断熱材に潰れが発生してしまい、対応の仕方についての質問などが入って個人輸入初心者の私としてはハラハラ ドキドキの3週間でした。
そんな事も有りながら、ようやく部品が到着し箱を開梱して問題のホースを見ましたが、思ったほどひどい潰れでも無く、ちょうど潰れている位置が車体側で取り付ければ隠れてしまいそうだったので安心しました。

さて、交換に当たって作業順序を確認しなくては始まりません。
ジャッキアップし、フロントグリル、アンダーカバーを外しホースの取り回し、A/Cコンプレッサーの取り付け位置を確認して頭が痛くなりました。
Bi−TURBOの名前の通り、ターボ車で吸入空気を冷やすために ドでかいインタークーラーがフロントに居座っており、その後ろにエアコンのコンデンサーがあるのです。コンデンサーからのホースはインタークーラーとコンデンサーの中間に接続部があってバンパーを外し、インタークーラーを外さなければ、交換出来ないのです。更に、インタークーラーのパイピングがエンジンの補機類の下を這っているのでエアークリーナーBOX共々、外さなければならないのです。
大変な作業だと思いながら、これをやれば天国が待ってると自分に言い聞かせ、作業の日程を決めました。
仕事柄、出張が多く出張日程と にらめっこ しながら土日の2日で作業することにしました。
予め、行き着けのスタンドからクーラーガス注入機をR12フロンガス5本を購入する時に借りてきて作業開始です。
先日、アンダーカバー、フロントグリルは外して置いたので、ヘッドライトユニットとバンパーを外します。
余談ですがフロントグリルを外したBMWはBMWでは無くなっちゃいます。どんな車でもそうかも知れないのですが、アメ車だかドイツ車だか日本車なのかさっぱり分からない無国籍車にしばらくなってました。
そんな状態で走っていると、対向車のドライバーが不思議な顔して見るので笑えました。
さて、ヘッドライトユニットは比較的簡単に外せたのですが、バンパーを外すのにボルトが固着して外れません。5年落ちの車で それまで外された事の無いボルトですし、ましてやバンパーを固定しているボルトなので仕方ありませんが固いの何のって、CRCをたっぷり吹きかけ、6角レンチにパイプを掛け、力が倍増するようにして力一杯まわすとパキンッ!と言う音と共に緩んでくれました。
もう少しでナメてしまう所で残りのボルトを外すのが不安になりましたが、再度CRCを吹きかけ、残りの3本のボルトも外しました。E34のバンパーはこのボルト4本のみで固定されていてサイドはスライドさせれば外れる様な構造の取り付けでした。
後から気が付いたのですが、バンパーは車体にBOGEのショックアブソーバーを介して取り付けられており、少々ぶつけたくらいでは、このショックアブソーバーとサイドのスライド取り付けによって損傷が少ない様になっているのです。
国産車の大半がモノコックのプラットフォームに直付けなってるのに凝った作りになっていて感心しながらBMWの設計に心の中で拍手をしてしまいました。
Front View 良く聞く話にBMWと国産車が事故った時、BMWは何とも無いのに国産車はグッシャリいっちゃったっていうのもここら辺の作りの差ではないでしょうか?
しかしALPINAのバンパーは重い重い!!E34のでかいバンパーにエアースポイラーが付いているため一人作業ではやっとです。ボディにキズを付けない様に引きずり出し、ようやくインタークーラーと御対面です。
Bi−TURBOは他のALPINAエアースポイラーと違ってインタークーラーに走行風が当たる様にスリットが入っているのですがそれでもインタークーラーの半分より下しか走行風が当たりません。 上半分はちょうどナンバープレートが取りつく部分の裏側にあり、ナンバープレートを移設しバンパーを切り欠けば効率は上がるのでしょうが、ALPINAはそこまではやってくれてませんでした。自分もBi−TURBOのバンパーを切り欠く勇気はありません。(笑)
インタークーラーを支えている4本のボルトとパイプ接続部を外しフィンを曲げない様に外します。
当然、インタークーラーの走行風の当たるところは飛び石や虫で汚く塗装が剥げてしまっているため、この機会にきれいにフィンを掃除しブラックのスプレーで化粧直しをして置きました。
さぁ ようやくA/Cコンプレッサーを外そうと気が早りますが、Bi−TURBOは許してくれません
インタークーラーとTURBO、エアフロのパイピングを殆ど外さないとA/Cコンプレッサーが外せないのです。無理矢理と言っていいほどTURBOを搭載した車なので(それもツイン)パイピングも知恵の輪状態っ! 一本、一本外し方を考えながらなんとか外しました。
これでようやく、B10 3.5/1 状態(?)作業性ではノンターボのB10 3.5/1がうらやましく思いました。
A/Cコンプレッサーの取り付けはどの車も同じで 高圧側、低圧側のホースを外し、電磁クラッチのコネクターを外しエンジンに取り付いてる2本のボルトを外すだけです。
ただコンプレッサーの重さには気を付けなければなりません!!。
単体で10kgもあるのです。車体の下に潜っての作業のためもう少しで顔面直撃ニヤミス状態でした。
(実はチョット顔面で受け止めてしまったのですが...)そんな事もありながらA/Cコンプレッサーが表舞台に顔を出してくれました。

A/C Compressor ここで、いやーな予感が頭の中を通り過ぎたのです!
個人輸入したコンプレッサーと何か違うんです!!
開梱した時、輸入したA/Cコンプレッサーにはセンサー類なんか付いていなかった気が...
やはり予感は的中でした。輸入したコンプレッサーはマニュアルエアコン用なのでしょう、センサーも何も付いていません。電磁クラッチの+線にギボシ端子が付いてるだけ、一方壊れて取り外したコンプレッサーにはコンプレッサーの異常加熱を検知すると思われる温度センサーが付いているのです。
しばし凍り付きました!バンパーはもとより、相当の部品を外した後の出来事ですから...
このまま 元に戻し、輸入したコンプレッサーを返品交換するなんて、とてもじゃないけど出来るはずありません。
良く調べて見ると、違うのはセンサーが有るか無いかだけで、コアは一緒の物でセンサー取り付け部も有りました。電磁クラッチ部は同じでしょうからセンサーを壊れたコンプレッサーから外し、電磁クラッチの線に半田付けすればOKだろうとセンサーを移植しました。これで新旧合作コンプレッサーの出来上がりです。ここまでで陽も暮れて来た事だし、明日 取り付け作業する事にしました。

朝、早起きし取り付け作業の開始です。高圧側ホースを新品と交換し、後は外した作業の逆をやれば良いだけですので取り外し作業より短い時間で作業は進みました。インタークーラーを取り付けた所で、冷媒のフロンガスを入れる事にしました。(早く涼しい風が吹き出すのを確認したかったのです。)
Gas Charge エンジンをかけてスタンドから借りてきたガス注入機を低圧側ホースに接続しエアコンスイッチを強風目一杯にします。
ガスメーターを確認 アレっ! ガスが全然入って行かないっ!
何でっっ!? コンプレッサーを見ると電磁クラッチがONしていません!
やはり新旧合作のセンサー移植作戦は失敗だったのか...
としばし頭の中が空っぽになってしまいました。
...ふと何故か頭の中にセンターコンソールのドライビングコンピュータにAIR−TEMPモードがあることを思い出し、確認してみる事にしました。ドライビングコンピュータの示した数値は−35℃!! 頭にピンと来ました。電磁クラッチがONしない理由は、コンピュータがおせっかいにも"外気温が−35℃なのにクーラー掛けるバカ居ないだろっ!"って言わんばかりに電磁クラッチに電気を供給しなかったのです。
ではなぜ外気温が−35℃になっているのでしょう? 答えは簡単 E34のバンパーの中に外気温センサーが取り付けられているのです。
向かって右側のヘッドライトウォッシャーの下あたり、小さい穴が開いていてそこに外気温センサーがあるのです。逸る気持ちを押えられず、バンパーを取り付ける前にエアコンのガスを入れようとしたため、そのセンサーの存在をまるっきり忘れてしまっていたのです。
バンパーを仮付けし、センサーのコネクターを接続しもう一度、AIR−TEMPを確認すると徐々に温度が上がっていきます。その温度上昇のスピードの遅い事! 30分してようやく15℃に達しました。オートエアコンの目盛りの最低温度は16℃ですから16℃に達すれば電磁クラッチがONするはずです。 ...15.5℃になった時、カチッという音がエンジンルームからしました。エンジンルームのA/Cコンプレッサーを見てみると、電磁クラッチがONし、コンプレッサーを回していました。
思わずうれしくなってしまいました。
しかしコンピュータも本当におせっかいですよね
外気温が15.5℃以下だとクーラーを効かせないなんてっ。 暑がりの人はどうするんだって感じですが実はこの外気温にはウラがあるんです。外気温と言ってもセンサーが取り付けられているのはバンパーの裏側で周りにはラジエーター、インタークーラー等の熱源があるため、真冬でない限りクーラーはONしてくれるのです。
E34お乗りの方でエアコンが効いたり効かなかったりする場合AIR−TEMPを見て下さい! もしかすると15.5℃以下になってるかもしれませんよ。
コンプレッサーが回ってくれれば、フロンガスは入ってくれます。結局全くの空状態から買ってきた5本のフロンガス全て入ってしまいました。
後でニコルから聞いた話ですが、5〜6本は入るそうです。

エンジンルームからの熱風を浴び続けたあと、車内に戻るとそこは天国でした!!。
吹き出し口からガンガンに冷えた涼しい風が勢い良く出ています。嬉しさと作業の疲れが出たのでしばらく涼しんだ後、バンパーを取り付け、ヘッドライトやグリルを取り付け完成です。正味2日の作業でしたが、後はホース接続部からの漏れがなければOKです。作業終了後の1週間は大した用事も無いのにBi−TURBOを使い、エアコンの作動状態を確認する日々が続きました。(笑)
今まで原因不明で動かなかったフロントグリル内の電動ファンが突然動き出し、電動ファンのON、OFF制御は、A/Cコンプレッサーの温度センサーのフィードバックによって行われている事が判明し、今回の1つの修理で2つのトラブル解決となって喜んでます。
それから3週間、今も快調にエアコンは作動してくれています。本当に暑くなる前に修理が完了して良かったと思っています。

作業を終え、この場をお借りして個人輸入のお手伝いをして戴いたOZWさんにお礼を申し上げます。
ちょっと堅くなり過ぎましたが本当にOZWさんに感謝しています。そのお礼が前回、今回の2回連続メンテコーナーの記事のお手伝いです。
先日、OZWさんにお会いする機会があったのですが最近、単に個人輸入の手伝いを頼んでくる方が多いと言う話を聞きました。OZWさんも忙しいスケジュールを裂いてお手伝いしてくれているのですから、個人輸入の手伝いを頼まれる方は、輸入の経緯、取り付けに当たっての情報を必ず入れるように、私からもお願いします!。
長い記事になってしまいましたが、次回 またここのお手伝いの出来るようなトラブルが発生しない事を祈っています。(笑) トラブル以外の事だったら、いいんですけどね。
また機会がありましたらお邪魔しますので皆さん、宜しくお願い致します。

TOSHINORI.URABE

E-Mail tu-121@mars.dti.ne.jp


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